石川遼が先輩薗田くんを下し、この大会二連覇を達成しました。
先輩後輩対決、そしてキングVS王子とはよく言ったものです。確かにその例えは素晴らしいですね。薗田くんは間違いなくキングだと思います。
私は彼ら二人が一緒にまわるラウンドをナマで拝見しましたが、正直驚きました。薗田くんの飛距離です。遼くんを常にオーバードライブし、かつアイアンのキレも遥かに上でした。スイングの安定感、そして方向性もすばらしい。アマチュア時代での戦績的力は薗田くんが上だったと言うのも年齢的な事を差し引いたとしても頷けました。
プロのラウンドを見ていればわかりますが、ワンショットワンショットの差は素人目には解りません。そして遼くんが特別な選手だとは思えませんでした。いやむしろその普通レベルで(あくまで世界的にみた場合の普通)日本はおろか世界で戦っている事が不思議に思えました。しかし彼は日本国内に置いては間違いなくトップ選手です。
彼より上手い選手は大勢いると思います。しかし彼より強い選手は中々いません。あの最終18番あのあの場面で、ピンそばにピタリと付けられる選手は恐らく国内どこを探しても今現在遼くんだけです。いったいその土壇場での強さはどこからくるのでしょうか。
今回フジサンケイは本来間違いなく薗田くんのものだったと思います。
あのバンカーホームランから奇跡的なグリーンオン。そして18番大ピンチでの旗包みショット。プロゴルファー猿の世界でしたが(苦笑)神はもう明らかに薗田くんを選んでいました。
しかし、しかしです。
神をもねじ伏せてしまう遼くんがそこにいた事が不幸だったかもしれません。並の選手であればあの時点で優勝確定でした。
遼くんが黙っていてもバーディが取れるロングで取れない。他とにかくバーディパットがことごとくカップを舐め、すり抜ける。
もしそこにゴルフドラマがあるとするならば、流れからして薗田くんの優勝。しかしそのドラマの主人公はやはり遼くんだったのです。
まさかプレーオフ4H目であのバーディチャンスから3パットをするとは誰が思ったでしょうか。それは遼くんにしてみれば複雑だったかもしれません。それにしても薗田くんの脳裏には様々な思いが過り結果大きなプレシャーになったに違いありません。
前回薗田くんの記事を書いた時、危惧していたのはあまりにもゆったりとしたリズムだった事。特にグリーン上に置いてはおせじにも早いとは言えません。ナマ観戦していて気になったのは若いのに動きにキレがない事でした。慎重派なのでしょうけど、あそこまで神経質だとそのうちショートパットイップスになるんじゃないかと思いました。彼のパッティングのアドレスからは「入る」という自信より、外してはいけないといった不安が体全体から感じてしまいます。
ここ一番ならばまだしも毎回同じ様なゆったり、悪い言い方をすればトロイリズムが気になっていました。普段リズムの早い選手がここ一番慎重になるのであれば解りますが。
今のままのリズムでは残念ですけど薗田くんは上手い選手であり強い選手にはなれないと思いました。なんでもかんでも早ければ良いわけではありません。ようは判断に対する「キレ」が強い選手にはあります。もし薗田くんがそういったキレをマスターすれば間違いなく国内でダントツの選手になるでしょう。これは優作もしかりですね。
遼くんとの違いはそこだけだと思います。しかしそんな彼でもマスターズの予選カットライン上でのゴルフにはキレを失ってしまいました。プレッシャーに押しつぶされる事の殆どなかった彼ですらマスターズの様な異質の世界ではつぶされてしまったのです。もっともこういった経験を積んで今があり、明日があります。
それにしてもサッカーにしろ、野球にしろその全ては上手さではなく強さ。特にメンタル部分が重要なゴルフに置いては強さこそが最強です。
精神力をもっと磨き上げる為に何をどうするべきか。他の選手はまずその事からでしょう。今現時点で精神力の強さで抜きん出ているのは遼くん。片山選手の強さもそれが一番だったと思います。
とにかく今回の戦いは素晴らしかったですね。まだまだ二人の対決は続くと思います。次回薗田くんの巻き返しに期待したいと思うと同時に遼くんもこれまで以上に羽ばたいて欲しいと思います。