ゴルフ会員権、ゴルフ業界における法律の功罪

万次郎写真①
現在のゴルフ会員権の需要はほぼ100%近くが実需の買いで、ゴルフ会員権の購入者がプレーをすることが目的でマーケットが動いています。それはそれで健全なマーケットの有り様でしょうが、それでゴルフ業界として必要十分、満足していて良いのかという疑問も一方にあります。
今よりももっともっとお客様に喜んでいただける良いサービス、快適なプレー環境、施設を提供してゴルフの楽しさを感じていただくことを続けるには、ゴルフ場側にもある程度のストック、経済的な余裕が必要です。
平成初めのバブルと言われた時代の様子は明らかに行き過ぎたものでしたが、物事には表と裏があります。

バブル期からのゴルフ場経営の変遷

万次郎写真②バブルと言われた時代には、資金が潤沢にあって、それまでにはとても考えられなかった素晴らしいゴルフ場がいくつもオープンしてプレー環境が整備され、ゴルフが身近になりました。ゴルフコースを作る場合もコストをあまり気にせず、人口が100万人の小さな県でひとつのゴルフ場を作るにも200億300億のお金が流れ込み、そんなゴルフ場がいくつも作られました。
それ以前には、ゴルフをするために朝4時起きで片道2〜3時間車で走って、それでもスタートが取れてプレーができれば良かったという、今から思えばクレイジーな時代もありました。プレー料金もコースによっては現在の2〜3倍もあったようでした。
しかし、平成2年を境にしてその後の約20年は「驕る平家は久からず」のとおり、その時代に作られたゴルフ場のほとんどは預託金の償還問題で法的整理をせざるを得ない状況になってしまいました。メンバーも経済的に大きな損害を被り、ゴルフ場の倒産が大きな社会問題になりました。

ファンドによる買い漁りの実態と民事再生法

国外の投資ファンドをはじめとして、さまざまなファンド系がこの隙間を縫って倒産したゴルフコースを買い漁り、最終的にはゴルフ場創業当時のメンバーの権利はほとんど無視されゴルフ会員権がほとんど値段がつかず、ほぼ紙切れ状態になっているケースがほとんどです。こういうゴルフ場は平成27年の今もバブルの当時と変わらず高額な名義変更料を取り続け、年会費を徴収してプレー料金はビジターとメンバーはそんなに変わらないというような営業を続けており、メンバーにはとっても納得できない状況が続いているのが実情です。
全国で2,400近いゴルフ場のうち、バブル期以降に新設されたゴルフ場のほとんどは、法的整理でわかりやすい言い方をすれば借金を棒引きにしています。
ここで理解できないのは、何百というゴルフ場の実質倒産で民事再生法などの法的整理をしながら、それらのゴルフ場の経営者で刑事罰としての背任行為などで拘束されたケースがないことです。倒産したゴルフ場の経営者の中には、それまでに私財を投げうって、なんとか自力で再建しようと頑張った立派な方もたくさんいらっしゃいますが、残念ながらそうでない方もいました。そういう経営者がメンバーから預かったお金を10分の1や100分の1にしたり、実際に預託金の名目はお金を集めながら他の事業に流用して失敗している例も少なくありません。それでも法的整理後も堂々と居座っているケースは、普通の常識では考えられず、他の業界ではとても許されないことで、ゴルフ業界の甘さ、いい加減さを露呈していると言ったら言い過ぎでしょうか。
メンバー自身ももっと権利を主張するべきではないでしょうか。金持ち喧嘩せずでゴルファーは自己責任という言葉の中で大人し過ぎます。
また、とりあえず形を整えてさせしまえば良いといういう、我が国の司法制度の中での一部の裁判官、弁護士の無責任な対処には憤りを感じます。

会員権の所有者や真面目なゴルフ場を置き去りにした民事再生法

ゴルフ場救済法と言われて成立した民事再生法ですが、結果としては「悪貨は良貨を駆逐する」のことわざどおりになってしまいました。何百億というメンバーからの預託金をほとんど形ばかりの債権者集会を2〜3度開き、100%近くの再建を切り捨てほとんど無借金経営のようになったゾンビ企業が生き残り、そのためにその近隣の真面目にやっていたゴルフ場が例えばビジター勧誘のプレー代の値引き競争に巻き込まれ次々に倒れていくのは忍びないです。結果として民事再生法は業界に関して言えば、小を救うことで結果として大を殺す事になったのではないでしょうか。
そういう事があったため、現在に至ってもマーケットはゴルフ場を見切った状態になっており、最近では法的整理、民事再生法が始まっても騒ぐメンバーはほとんどいなくなっています。これはゴルファーから業界が見限られているということで、再度信頼を取り戻すには大変な努力が必要となります。
ゴルフ場救済法と言われ成立した民事再生法でしたが、重ねて過ちを繰り返さないためにも改めて検証する必要と、適用されたゴルフ場のその後についてチェックする必要があるはずです。

by 万次郎